こんにちは。スタッフの草野です。
さっそくですが、最近読んだ本を紹介します。
「つながり続けるこども食堂」 湯浅誠著 中央公論新社 2021年
タイトルのとおり、ここ数年で全国的に広がっているこども食堂について書いてあるんですが、私たちの子育て支援にとっても、とても勉強になりました。
今年の6月に発行された新しいものなので、コロナ禍でのこども食堂の変化や問題などにも触れてあり、まさに「コロナ禍で子育て家庭とどうつながろう?」と日々考えている私たちにとっても、ヒントをもらえた感じがしました。
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家庭の中での、いわゆる虐待についても触れてありました。
ちょっと長いけど、一部を引用しますね。
「ふつうの家庭」と「虐待家庭」の差は、それらの言葉から人々がイメージするほどには大きくない。
むしろ一つの家庭の中で「ふつう」「虐待スレスレ」「虐待」の状態が、信号機のように移り変わりながら生じているとイメージしたほうが実態に近い。多くの家庭はほとんどの時間が青(ふつう)だが、ごくたまに黄信号(虐待スレスレ)が灯ってしまうことがある。母親がクタクタに疲れているまさにそのときに、子どもがいつも以上にぐずるといったことが重なってしまった、など。それでも多くの保護者は、赤信号に転化せずに踏みとどまり、また青信号へと戻っていく。
しかし母親が孤立していたり、生活が苦しくて余裕がなかったり、子どもに特に手のかかる特性があったりすると、黄信号の点灯時間が長くなることがあり、黄信号の点灯時間が長くなると、何かのはずみで赤信号に転化してしまう。
「つながり続けるこども食堂」 88ページ
この信号機の例え、私自身すごくわかるなぁと思いました。
心の中でチカチカしている信号機。いつ黄色になっても赤になってもおかしくない、紙一重に感じることもあります。
子育て支援の役割のひとつに、この信号機が黄色になりそうになったり、赤になりそうになったりしたときに、青に戻っていくサポートというのがあると思います。
でも私たちが青にするのではなく(←したくてもできない!)「赤になりそうだから、あっちの道から行ってみない?」って誘うくらいの。
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最近は、ちょっと検索すれば様々な情報が手に入るのに、それでも子育ての悩みは尽きませんよね。心の信号機を青に保っておくのもほんとに難しい。
それはその情報が、自分のためにもたらされたものではないから、だと思います。
数年前に聞いた、ある小児科でのエピソードを思い出しました。
お子さんの体に関する心配なことを言われて、お母さんがさらに詳しく聞こうとすると、「スマホで調べれば出てくるでしょ」と返されたとか。
「違う!そうかもしれないけど、絶対違う!」
と叫びたくなりました。
それは、もう一度書きますが、スマホの情報は、自分のためにもたらされたものではないから。
実際にその子を診たその先生の言葉で説明してもらいたい!
ネットの情報はただの情報でしかなく、判断は自分自身ですよね。
必要なのは、「自分の」悩みを聞いてくれる人であり、ともに考えてくれる人。
それは親であったり、友人であったり、学校の先生であったりすると思いますが、私たちもそんな存在でありたいと願っています。
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話がそれましたが…
この本の中に、もうひとつ気になるワードがありました。
納得解という言葉です。
いろんな考えや価値観を持つ人たちと関わり、いろんな選択肢がある中で、
お互いに思いやり、考えを聞きながらお互いが「納得」する解答を見つけていく。
子育てには、正解はないとよく言われます。
家庭環境や、家族関係、その子の個性など、複雑に関係し合っている。
だからこれが正解!というのは言えない。
「じゃあどうしたらいいの?誰か教えて~」ってなっちゃうけど、
「納得解」を探す、という方向はどうでしょうか。
子どもを見て、話を聞いて、家族やいろんな人とも話して、自分なりの納得解を見つける。
悩んだり迷ったりしながらも、
「うちはこれでいい」
という納得ができれば、進む方向も見えてくるのではないでしょうか。
こども食堂に関する知識を得るとともに、子育てと支援についても考えさせられる一冊でした。
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